2018年01月08日
オーパ大特集、プレゼントにも喜ばれる商品が満載です
オーパ自分の硬さ
前回「ツインターボというノスタルジー」の続きです。
ツインターボの進化系として鳴り物入りで登場したシーケンシャルツインターボとは何か。
ざっくりと(細かい間違いには突っ込まないように!!に)説明しておきましょう。
シングルターボと同等の低回転特性を得るため、ツインターボはシングルに比べて小さいターボを二つ同時に使用します。
しかし小さいターボを二基いっぺんに回しながら加給するよりも、低回転時にはひとつのタービンだけを積極的に回してシングルタービンとして使ったほうが当然レスポンスは良くなります。
そして回転数が上昇してふたつのタービンを両方とも十分に回せる排気圧が発生してから二つ目のタービンを回しだしたほうがターボラグが発生しないのではないか!と、木から落ちてきたリンゴに頭をぶつけた人が閃きました。
そしてさらにざわ・・・ざわ・・・・してきたその人は、「よく考えると、何もわざわざツインターボだからといってタービンのサイズを同じにしなくても低回転時に作動するタービンは小さく、排気エネルギーがありあまる高回転時に作動するタービンは大きくしたほうが、より全域でパワフルになるのではないか!?」という圧倒的閃きに達しました。
つまりレスポンス重視の小さめのタービンと、ハイパワーを生み出す大きめのタービン、そのふたつを複雑に制御しながらおいしいとこ取りをする発想、これぞまさしく僥倖、じゃなくてシーケンシャルツインターボの誕生です。
まあ多分技術的着想とか試験とかは昔からあったのでしょうけれど、国産市販車でシーケンシャルツインターボが採用され始めたのは1990年代以降で、栄誉ある国産最初の採用車種は1990年発売のマツダユーノスコスモです。
FD3Sではありませんでした!ザンネンッ!!
なんという美しい車でしょう!そしてコスモは言わずとも知れたロータリー車。
ロータリーはターボとの相性が良い反面低回転域の弱さがネックとなっていました。
なのでマツダ開発陣がこのシーケンシャルツインターボシステムに飛びついたのはある意味抗うことの出来ない運命の定めだったのかもしれません。
ちなみにコスモは20Bでも13Bでも、プライマリーとセカンダーリーでタービンサイズが違います。
これが本来のシーケンシャルツインターボの利点です。
ところがコストの問題やら面倒くささやら、いろいろな大人の事情で翌年に登場したシーケンシャルツインターボ車であるFD3S、RX-7ではプライマリーもセカンダリーも同じサイズのタービンになりました。
以降、1991年デビューのJZS147アリスト、1993年デビューのJZA80スープラもシーケンシャルツインターボを採用しましたがこちらもタービンサイズは二個とも同じという無難な構成になっています。
しかし同時期1993年に発売された2代目レガシィ(BD・BG)では、プライマリーとセカンダリーで異なるタービンを用いるという本来あるべき姿のシーケンシャルツインターボが復活しました。
このように理論上では優れた特性を持つシーケンシャルツインターボでありましたが、このシステムは複雑な制御を要し、当然部品点数の増加も招くこととなりました。
もちろんコストも通常のシングルターボやツインターボよりも増します。
シーケンシャルツインターボのような高価で複雑なシステムがこれだけ多く日本国内で流通することができた背景には、もちろんバブル景気があったからこそでしょう。
メーカーが十分にテストを繰り返し、市販車としての耐久性を確保して世に送り出したこれらのシーケンシャルツインターボではありましたが、当初こそ賞賛の声が大きかったものの時間が経つにつれオーナーからは不満の声が上がりだすこととなります。
その多くはシーケンシャルの切り替わりタイミング周辺で発生する「段付き」の加速です。
どの車種でも基本的にはメーカーが想定しているような「きっちりとアクセルを踏み込んで、適度に高回転域までエンジンを回す」使い方をしていればほとんど気になることのないレベルでしかなかった筈なのです。
ところが実際にシーケンシャルツインターボという高性能なシステムを搭載した車を買い求めた人たちの多くは、その高性能の悦楽を満喫するどころか、燃費だの低回転域でのトルクだのおよそ本質と離れた領域でしかその車の価値を知ろうとしなかったのです。
またシーケンシャルツインターボはその制御が複雑であるゆえ想定していなかった様々なトラブルを起こしました。
例えばあまりにドライバーのアクセル開度が低かったりとか、オーナーが吸排気系のカスタムを行ったため加給圧特性が変化してしまったとか様々な理由でシーケンシャルの切り替わりタイミングが適切にならず、プライマリーとセカンダリーの切り替え時のラグが顕著に発生したりしてしまったこと。
逆説的な話ですが、例えば出来の悪いチューニングカーなどのテスト走行をするときに、スロットル全開〜パーシャル〜スロットル開度8割などとか、ある一定のパターンの「意地悪」な操作を行うと、セッティングを行ったチューナーのレベルが低い(もしくは手抜き)だと加速時に息付きを起こしたり、ブーストが上限設定値を大幅に超えてオーパーシュートしたりします。
ターボ車は基本的にスロットル開度100%付近を使用することで本来の性能を発揮するものです。
そしてシーケンシャルツインターボではノーマルでもそういう症状が出やすい。
いや正確には出やすいというより、ドライバー自身がそういう症状を誘発するような乗り方使い方をわざわざしているといったほうが正しいのかもしれません。
なのでメーカーからみればあれこれとオーナーからの不満が出るたびに苦い気持ちを感じていただろう事は容易に想像できます。
ですが市販車である以上、メーカーが想定もしていなかったような使用環境にも対応できるだけの完成度が必要であったという事実も否めないのです。
さらに実際には原因の特定が困難なシーケンシャル特有の不具合も多数発生しました。
これは部品点数の多さや制御の要素の多さが招いた結果である事は明白でした。
基本的なシングルターボだとブースト圧制御はアクチュエーターとインマニの圧力をホースで繋ぐだけで完結するというシンプルさと比較すれば、トラブルが出ないほうがむしろおかしいと言っても過言ではないでしょう。
さらに走行距離、年数が経過してくるとその傾向にはますます拍車が掛かりました。
実際に私が所有していたFD3Sもセカンダリータービンの加給にトラブルを抱えていました。
セカンダリーが回りだせば一瞬はブーストはさらに上昇し始めるのですが、途中でセカンダリーが仕事を放棄してしまうのです。
ブーストがたれるとかそんなレベルではないのでシーケンシャルシステムに何らかの不具合を抱えていた事は間違いないのですが、あまりの部品点数の多さと制御の複雑さにトラブルシューティングを諦め、常時ツイン化という安直かつ確実な解決策を選びました。
この常時ツイン化という手法はFD3Sに限らず、不具合が発生したシーケンシャルツインターボ車輌ではよく選択される解決策です。
この仕組はプライマリータービンとセカンダーリータービンへの排気バイパス制御を捨て、両方のタービンに同時に排気を当てて両方のタービンを同時に回し始めるというものです。
この改造をすることによって僅かな低速トルクの減少と引き換えに、段付きのないスムーズな加速と安定したブースト制御が比較的安価で手に入ります。
なのでいつまた不具合を起こすかもしれないシーケンシャルシステムの修理に延々と投資を続けるよりも、見切りを付けて常時ツインに切り替えるオーナーが続出することとなりました。
そのうちタービン本体や加給システム等の技術革新が進み、大きめのシングルターボでも低回転時のターボラグを発生させることなくスムーズに加給を立ち上げられるようになってきました。
大きめのタービンでも低回転域で十分実用的に回せるようになったという事は、当然高回転時の風量の確保も心配する必要がなくなったということです。
それはターボラグの解決策として鳴り物入りで登場したシーケンシャルツインターボが、その役目を終えたということを意味していました。
バブルが咲かせた徒桜とも言えるシーケンシャルツインターボとはいったいなんだったのでしょうか。
低回転から高回転まで全てでの高性能を手に入れようとした強欲さなのか。
メーカーとしてのプライドだったのでしょうか。
その代償は途方もない時間とコストでした。
忘れてはいけない真理がここにある。
何かを手に入れるという事は何かを失うということなのだ、と。
春はあけぼの、夏はオーパ
おはようございます
(遅いw)
(まわしものではありません)